「アメリカ料理で好きな物はなんですか?」と聞かれたら、私、即答です。「バーベキュー!」
バーベキューは、ハンバーガーなどと並んでアメリカの国民食言っても過言ではありません。7月4日の独立記念日にバーベキューをするのはアメリカの伝統行事ですし、フットボール観戦やパーティーなど、みんな様々な行事を言い訳にして、バーベキューをするのが大好きです。
ところで、日本で「バーベキュー」と言ったら、屋外でみんなでワイワイしながら、お肉や野菜を焼いて食べるイベントを連想するかと思います。
アメリカでも日本のように、外でお肉を焼いて食べる「イベント」のことをバーベキューという場合もあります。
だけど、アメリカの本格的なバーベキューレストランに行くと、日本のバーベキューとは少し違うものが出てきます。
本来バーベキューとは、大きなお肉の塊や、肉の固い部位を、比較的低温で半日以上かけてじっくり調理したもの。調理方法は、ロースト(あぶり焼き、または蓋をして蒸し焼き)やスモーク(煙の熱で燻製)などがあるようですが、ポイントは「低温で長時間」調理していること。弱火でじっくり調理することによって、トロトロの、柔らか~いお肉になります。
アメリカではよく、おいしいBBQ を食べたときに「肉が骨から滑り落ちる」、「口に入れるとお肉が溶ける」と言ったりします。「柔らかくなるまでじっくり調理してある」というのは、アメリカのBBQの重要な特徴です。ステーキなどのグリル料理とは違うカテゴりーとなっています。
日本のバーベキューは、小さくカットした肉を短時間で焼き上げることが多いので、調理方法の意味でいうと「焼肉」とか「グリル」になるんだと思います。
いかがですか?「バーベキューくらい食べたことあるゾ」って思っていても、こういうアメリカンスタイルのバーベキューって食べたことない方多いのではないでしょうか。私もアメリカに来るまで知りませんでした。そして、食べたらヤミツキに…. 。
今回の記事では、私の大好物でもあり、皆さんにもぜひ食べていただきたい、アメリカのバーベキューについて紹介してみようと思います。バーベキューレストランでの注文の仕方なども書いてます。
1. アメリカのBBQの本場
アメリカの中でもBBQの本場といわれる地域は、下のマップのピンクで囲んだ地域。テキサスから東のアメリカ南東部です。
- ノースカロライナ州
- Lexington
- サウスカロライナ州
- アラバマ州
- テネシー州
- Memphis, Nashville
- ミズーリ州
- Kansas City, St. Louis
- テキサス州
そして、アメリカの4大BBQスタイルと呼ばれているのが以下の4つ。4つのスタイルの違いは、後ほど説明します。
→ アメリカの4大BBQスタイル
- Carolina Style
- Memphis Style
- Texas Style
- Kansas Style
2. お肉の種類と部位
地域によって、使用するお肉の種類や部位、調理方法が少し違います。
レストランでBBQを注文する時は、お肉の種類と部位を指定しないといけないので、ある程度の知識はあった方が良いです。
まずはお肉の種類ですが、昔からBBQには豚肉が使われることが多かったので、ポークBBQ はどの地域でもポピュラーです。
特にカロライナ州やテネシー州などの東部の州は、ポークを使用した伝統的なBBQ派です。
カウボーイのイメージでも知られるテキサスやミズーリなどでは、牛肉の消費量が多く、ビーフBBQも多く食べられます。特にテキサスのBeef Brisket は有名。
州 | ポピュラーな肉の種類・部位 |
ノースカロライナ東部 | Pork Shoulder |
ノースカロライナ西部 | Whole Pork |
サウスカロライナ | Pulled Pork (Pork Shoulder) |
アラバマ | Smoked Chicken or pork |
テネシー | Pork ribs, Pork shoulder |
ミズーリ | Ribs, Burnt ends |
テキサス | Beef Brisket |
次に、ポピュラーなお肉の部位と調理方法ですが、BBQはもともと、固い部位や売れ残った部位を美味しく食べるために考案されたお料理なので、使用される部位がステーキなどとは少し違います。
アメリカのBBQの定番と言われるのが、①Brisket, ②Ribs, ③Pulled Pork の3つ。
① Ribs (リブ)
Ribs (リブ) は、BBQの王様的存在。あばらの周りの骨付き肉。ポークリブが主流ですが、ビーフリブを提供しているレストランも見かけます。
Photo by pascal claivaz from Pexels
② Brisket (ブリスケット)
Brisket (ブリスケット) は、牛の肩ばら肉。塊で調理した後、スライスして振舞われます。
Photo by Hayden Walker from Pexels
③ Pulled Pork (プルドポーク)
Pulled Pork (プルドポーク) は、豚の肩肉を調理して細かく裂いたもの。ノースカロライナ州や、サウスカロライナ州でポピュラーな調理方法です。そのままでも食べますし、パンにはさんでハンバーガーみたいにして食べることもあります。
Photo by Vékony Richard from Pexels
④ソーセージ・⑤チキンBBQ
ソーセージや、チキンBBQ も良くメニューに見かけます。
Photo by Sangeet Rao from Pexels / Thirdman from Pexels
⑥ Burnt ends
Burnt ends は、カンザスシティーの名物。日本語に訳すと「焦げた端っこ」みたいな意味でしょうか….。
上の②でBrisket を紹介しましたが、Burnt Ends は、Brisket の片割れみたいな物。Brisket は、脂肪の少ない「Flat」と、脂肪の多い「Point」の二つの部分からできています。
Point 部分は脂が多すぎて、スライスすると崩れてしまうので、一般的にBrisketとしてテーブルに出てくるのはFlat 部分。Point 部分は捨てられてしまうこともあるそうです。
Burnt Ends は、このPoint 部分をBrisket から切り離し、小さくカットして調理されたもの。サイコロ状にカットしてあることが多いです。
Point 部分は脂肪やコラーゲンが多いため、調理に時間がかかり、調理し終わるころには、調理用ソースがキャラメル状になって表面が真っ黒になります。
外はカリッと、中はジューシー、長い調理時間のおかげでとてもスモーキーな風味になります。
カンザスシティーでは、Burnt Ends を美味しく調理することは芸術とされているのだとか。
3. BBQ ソースの種類
BBQソースも、地域によって様々なものがありますが、ほとんどがビネガー (酢)をベースに作られています。ビネガーにトマトソース(ケチャップ)などを混ぜて甘みをつけた物も多いです。
マスタードソースもよく見かけます。
アラバマ州のマヨネーズベースのBBQソースは、いつか食べてみたいと思っています。
州 | BBQソースの特徴 |
ノースカロライナ東部 | ビネガーソースの元祖。 |
ノースカロライナ西部 | 東部のビネガーソースを、ケチャップや砂糖で甘くしたソース。 |
サウスカロライナ | マスタードベースのソースに、ビネガーとスパイスで風味付け。 |
アラバマ | マヨネーズベースの白いBBQソースに、ホースラディッシュの風味。 |
テネシー | ミズーリの濃厚ソースに似ているが、ミズーリよりも酸っぱくてスパイシー。 |
ミズーリ | ビネガー、ケチャップ、Molasses(糖蜜)を混ぜた濃いソースをたっぷり付けて食べる。 |
テキサス | 調理中にビネガーソースを塗りながら焼くことが多い。食べる時にソースはたくさんつけず、あっさり系。 |
こちらは、アメリカのスーパーマーケットのBBQソース売り場。様々なスタイルのソースが売ってます。
↓↓↓ こちらのブランドはカロライナ州とテネシー州の定番ソースがズラリ。
🔍 クリックすると拡大
右から….
- 赤ラベル:サウスカロライナ州のマスタードソース
- 水色ラベル:ノースカロライナ東部(ENC: Eastern North Carolina) の元祖ビネガーソース
- 青のラベル:カロライナ州西部のビネガーとケチャップの甘いソース。
- 茶色:メンフィス(テネシー州)のスイートトマトソース
↓↓↓ こちらはメンフィスと、テキサススタイルのBBQソース。
4. アメリカの4大BBQスタイル
上で、いろんなスタイルのBBQを紹介しましたが、その中でも特に有名なのがこちらの4つの地方のスタイル。
- Carolina Style
- Memphis Style
- Texas Style
- Kansas Style
① Carolina Style
カロライナスタイルは、ポークを使用した伝統的なBBQのスタイル。ポークを焼いた後は、裂いたり(Pulled Pork)、刻んだり(Chopped Pork)、スライスにしたり (Sliced Pork) 、と様々。
ノースカロライナ州東部では特に、豚を丸ごと(Whole Hog, Whole Pig) 調理し、全ての部位を刻んでミックスしたスタイルがポピュラー。ソースはビネガーベースです。
ノースカロライナ州西部は、ポークの肩肉のBBQが主流。ソースは東部のビネガーベースにトマトソースやケチャップで甘くしたものを使います。ノースカロライナ西部のBBQは「Lexington Style」とも呼ばれ、Lexington の街では毎年BBQフェスティバルが行われています。
サウスカロライナ州もノースカロライナ州によく似たスタイルですが、一部の地域で「Carolina Gold」というマスタードベースのBBQソースを使うことで知られています。
② Memphis Style
テネシー州のメンフィススタイルも、ポークを使用した伝統的なBBQスタイル。特にポークの肩肉とリブが使用されます。
メンフィススタイルのリブには、dryとwet の2種類があるのだとか。dryリブは、塩やスパイスなどの液体状でないシーズニングで下味をつけてから焼き、ソースをつけずに食べます。wetリブは、調理前、調理中、調理後と、液体ソースを塗りながら調理されます。
ソースは、ビネガーにトマトソースや糖蜜を加えて甘くしたもの。他の地域に比べると酸味やスパイスが利いたものが多いよう。
③ Texas Style
テキサスと言えばカウボーイ。伝統的なポークに加えて、ビーフBBQもポピュラーです。特にテキサスのビーフブリスケットは名物。
テキサス州は広く、地域によってはメキシコ料理の影響を受けていたりと、テキサス内でも様々なBBQスタイルがあるので、あまり深入りしませんが、詳しく知りたい方はこちらを….
→ テキサスBBQ Wikiledia
テキサススタイルは、塩・コショウベースでしっかり下味を付けてから焼いてあるものが多く、ソースをつけないで食べる地域もあるくらい、ソースは補助的な感じです。ソースがベタベタついているBBQはあまり見かけず、ドライであっさりした感じ。ブリスケット・リブ・ソーセージがポピュラーなよう。
テキサスのBBQレストランは、テーブルで注文して持ってきてもらうのではなく、セルフサービスのスタイルが多いです。
お盆みたいなトレーに紙が一枚敷いてあるんですが、それを持って列に並びながら好きなものをオーダーしていきます。学校や会社の食堂みたいです。
それから「ブリスケットは1ポンド20ドル」というように量り売りスタイルが多いのも特徴的。
セルフサービススタイルの良いところは、お肉の部位について良く知らなくても、美味しそうなのを指さして「これを1/2ポンドください」って言うと、トレーににのっけてくれるところ。量も指定できるので好きな量だけオーダーできます。
④ Kansas Style
仕事でよくカンザスシティーに行くのですが、実はカンザスシティーは、カンザス州とミズーリ州にまたがっていて、「 Kansas City, Kansas 」と「 Kansas City, Missouri」の2つの市に分かれています。
ミズーリ側の方が都会で、BBQが有名なのもミズーリ側です。ジャズなんかも有名な街です。
カンザススタイルのBBQ は、ポーク、ビーフ、チキン、七面鳥、ラム、そして時には魚など、様々な種類の肉を使うことで知られています。Burnt Ends はカンサス名物。
そして、カンザススタイルはソースが命。ビネガー、ケチャップ、Molasses(糖蜜)を混ぜた濃厚ソースをベットリつけて食べます。どのお店も、BBQと同じくらいソースにもこだわりがあるようです。
↓↓↓ この店のBBQはちょっとソースかけ過ぎだと思いました。ソースは量を自分好みに調節できるように、別容器で持ってきて欲しいところ。
付け合わせにフライドポテトがよく出てくるのも、カンザスの特徴。
5. BBQレストランでの注文の仕方
① 一般的なBBQのオーダー方法
アメリカのBBQレストランでの注文の仕方を簡単に紹介しておきます。
メニュー画像をお借りしたのは、ノースカロライナ州で立ち寄った「Midwood Smokehouse」というBBQレストラン。カロライナスタイルのBBQはもちろん、メンフィス・テキサス・カンザススタイルのBBQも楽しめるお店です。
↓↓↓ BBQレストランのメニューはこんな感じ。
🔍 クリックすると拡大
まず好きな肉料理を選び、スモールプレートの場合は付け合わせ (side) を1品、ラージプレートは付け合わせ 2品を選ぶことができます。ハッシュパピーとピクルスも付いてきます。
追加料金で、ソーセージやリブなどを追加できるようです。
↓↓↓ コンボメニューや、シェフのおすすめプレートなどが用意されているお店も多いです。いろいろな種類のBBQ料理を試したかったり、どれを頼んでいいかわからない場合は便利。
このお店のコンボプレートは、5種類のプロテイン(肉料理)の中から4つ選ぶことができ、付け合わせが2品選べます。
↓↓↓ BBQ の付け合わせ (side) の定番は、Mac & Cheese・ビーンズ(豆の煮もの)・コールスロー・ポテトサラダ・野菜など。カンザススタイルではフライドポテトも多いです。
コーンブレッドも美味しいです。トウモロコシの粉を使ったアメリカ南部の家庭料理。
↓↓↓ BBQ レストランのデザートの定番は、アメリカ南部の伝統的なデザート。
ピーカンパイ・ピーチコブラー・バナナプディング などをよく見かけます。バナナプディングは、バナナ・カスタードクリーム・ビスケットが層になったデザート。
② テキサスの量り売りスタイル
テキサス州のBBQレストランでは、お肉の重量を指定して注文するお店をたくさん見かけます。
メニューには、パウンド当たりのお肉の料金が表示してあります。
*ちなみに1パウンド (1 Pound または 1LB)=約400g。
私も未だにコツが掴めず、ついついたくさん注文してしまいます。
↓↓↓ 参考までに、こちらは「1/2 LB のブリスケット・1/2 LB のリブ・ソーセージ2本」を注文した時の写真。
付け合わせに、ビーンズとポテトサラダも注文したので、夫と2人で食べたけどお腹いっぱいになりました。
③ テイクアウト
アメリカはほとんどのレストランで、テイクアウトオーダー、To Go オーダーができます。食べきれなかった分もBOXをもらってお持ち帰りできますので、家やホテルで楽しむのもアリです。
6. BBQはスーパーでも買える
BBQの中でも特にポピュラーなリブなどは、アメリカのスーパーでも買うことができます。
7. おわりに
今回は、大好物のアメリカのBBQについて紹介してみました。
ジューシーで柔らかな食感と、独特のBBQソース。本当に美味しいですので、アメリカに来られる機会があれば、ぜひ試していただきたいなとおもいます。
BBQ 有名な地域では、空港でもBBQレストランをよく見かけます。乗り継ぎなどで時間があるときに楽しんでみるのもおすすめです☆
■ アメリカの日常生活の雑記
→ BBQの記事一覧
→ 雑記の一覧
■ 南米のBBQ・アサード
【アルゼンチン】南米のお肉事情とカバーニャ・ラス・リラスのレビュー ♪■ バーガーキングのベジバーガー
【アメリカ】ベジタリアンバーガーもついにここまで来た!! バーガーキングの「インポッシブル・ワッパー」【人気のバーベキューコンロ★】